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女子高生的迷宮論  山賀ざくろ

 

 

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写真:小熊栄

 

伊香保アバンギャルズは群馬出身の女性舞台芸術家のパフォーマンスを披露する企画として発案したものなので、男のわたしは本来ならプロデュースに専念すべきところを、代表特権を行使するがごとく出演してしまうのはいかがなものかと内心では思っている。なので過去2回の本公演ではわたしが出演するにあたり、石坂亥士さんを引っ張り出して彼の演奏の力を借りて、三番叟もどきの怪しい出で立ちの仰々しいダンスを踊ってお茶を濁した。番外編を除いて今回で3回目なので、もう別のことをしないといけない。
歌を歌いながら踊ろうか。まだ夏真っ盛りの2ヶ月ほど前、小出和彦さんに〝広瀬川〟〝迷宮〟あたりをキーワードに作詞をお願いした。小出さんには2年前のアーツ前橋グランドオープン時に前橋一中合唱部の生徒さんに歌ってもらった ♪カゼイロノハナの作詞もしてもらっている。はたして今度の詞も、風景を描写する言葉とともに永遠に繰り返される生と死の時の流れを想起させる詞になっている。歌詞を紹介する。この曲を歌いながら踊るかもしれない。
 
 
『月と川とじめん』
 
 濡れた光はじめんにおちて
 森の上には赤い月
 ゆれる川面に白波たてて
 吹き出す風で砂が散る
 
 きょうとおなじあしたがくると
 疑うことなどなかったけれど
 それを奇跡と知ったのは
 しばらく経ったあとのこと
 
 あなたの生まれるずっと前
 誰もいないこの場所に
 月と川とじめんがあったのよ
 光と闇があったのよ
 青い光はじめんを染めて
 雲間ににじむあわい月
 黒の川面を背ビレで裂いて
 千の魚がくねり出す
 
 きのうとちがうきょうがくると
 予言のひとつもなかったけれど
 それを最後と知ったのは
 やはり終わったあとのこと
 
 わたしの生まれるずっと前
 誰もいないこの場所に
 月と川とじめんがあったのよ
 光と闇があったのよ
 わたしの死んだずっと後 
 誰もいないこの場所に
 月と川とじめんがあったのよ
 昼と夜があったのよ

 

 

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さて、冒頭の写真。2007年に群馬県立女子大学の学生の自主企画『屍♡ときめくダンスツアー』で大学の体育館で女子高生に扮して踊っているわたしです。この企画は【やることもなく鬱々としている学生(屍 shikabane)は、このイベントを通してどうなるのか。アートパフォーマンスと可愛い屍の初のコラボレーションです。お客様を絶対にみたことのない瞬間へご案内します。】をキャッチフレーズに、数組のダンサーと県女大生有志が女子高生に扮して、キャンパス内のあちこちでパフォーマンスを繰り広げるというものだった。上の写真のように屍だった女の子たちは、わたしが椎名林檎の♪夢のあとをBGMに激しく踊る過程でだんだんと覚醒してきて、最後は皆でcapsuleの♪Sugarless GiRL に乗って踊りながら体育館から外へ駆け出して行き、円形広場で大きく両手を広げ鳥になって羽ばたき続けるというストーリー仕立てだった。

 

 

 

わたしの女子高生ダンスは2005年初演の『ヘルタースケルター』に始まる。作品創作のきっかけなどは山賀ざくろウェブサイトの作品紹介のページ(スクロールして下のほう)に詳しく書いてあるが、初演時の映像を見ると、自分の意志とは関係なく、スカートとウイッグを身に付けさせられて無理矢理踊らされている男が、戸惑い迷い逡巡しながら踊っている様が映し出されている。そういう演出を狙ったわけではないのだけれど、そうなってしまった。その後何年かは女子高生ダンスをずいぶんといろいろなところで踊った。でも当初の探求すべき課題であった、スカートをはいて踊って女の子の気持ちがわかるようになったかと言えば、そんなことは全くなかった。ただ、何年か前にAbe “M” ARRIAさんといっしょに踊ったときに、Abeさんがやたらわたしのスカートをめくろうとして、それが非常に嫌だった。小学生のとき、クラスの女の子のスカートめくりをして、嫌がられて先生に叱られもした。なるほどスカートめくりをされるとこんなふうに嫌な気持ちになるんだ!というのが、40年もたってようやくわかった。当時わたしがスカートめくりをしてしまった女の子たちに心の中であやまった。ごめんなさい。
 今回は久しぶりに女子高生になろう!とも考えている。でも、わたしの次にAbe “M” ARRIAさんが踊る。Abeさんとは少しコラボする時間も作る予定。だからスカートをはいて踊ったら、またスカートめくりをされてしまうだろう。さあ、どうする!?!? 悩む、悩む、悩む。本番は3日後だ。

 

 

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今回のチラシ(フライーヤーっていう言い方のほうがカッコイイけれど、わたしはこちらのほうが親しみがある)の表面のベースになっている写真は、交水社近くにある広瀬川の交水堰を流れ落ちる水しぶきをアップで撮影したものだ。高さにして1メートルあるかないかの落差なのにゴーゴーと激しい音を立てて水が流れ落ちる様は、すぐ近くで見ていると迫力があるし、さらにズームインして飛び跳ねる水滴の動きを見続けていても飽きない。
元の写真は、曇りの日の夕方近くに撮影したので、グレーっぽい色味だったが、色彩補正で濃いブルーにした。前橋文学館近辺の広瀬川の色彩のイメージは、川べりの木々の緑が映り込んでいるから、前橋市民なら誰でもが〝黄緑色〟をイメージするだろう。今回は公演タイトルの『広瀬川ラビリンス』のイメージに近づけるべく濃いブルーにして、暗い迷宮に迷いこんでしまった感じをビジュアル化した。チラシのデザインは毎回お願いしている寺澤事務所・工房の寺澤徹さんにやっていただいた。
チラシの裏面のベースにおおきな渦を巻いた絵柄が敷いてあるが、これはわたしの指紋。朱肉を付けて紙にペッタンしたものを拡大してレイアウトしてもらった。こうしてみると指紋は出口のない迷宮のようにも見える。そして指紋のある人の指の先端は、ぷにゅぷにゅしていてさわると気持のよい肉球みたいでもある。この指先でわたしはキーボードを叩いてあれこれ考えながら文章を作っている。テーブルのつるつる、自分の髭のザラザラ、キュウリの表面のデコボコも指先が鋭いセンサーになる。

 

     め く る め く 迷 宮 

               も し く は 

                   肉 球 く る く る 

 

  伊香保アバンギャルズ プロデュース公演「広瀬川ラビリンス」

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