ロミオとジュリエットにならないために

 8月9日。長崎・原爆の日。市長の平和宣言、市民代表の平和への誓いは心に刻んでおかないと。

http://www.city.nagasaki.lg.jp/peace/japanese/appeal/

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130809/plc13080915540018-n1.htm

  福島原発で大量の放射性物質が海に流れ続けているようだけれど、1日300トンという数字だけだとどうもピンときません。着実に海の汚染が広がっていることにどう想像力を働かせて実感することができるのか、群馬に住んでいると当事者意識を持つことが難しいところもあるのは正直なところ。原発事故が終息に向かっているとはまったく思ってないし、東京電力や政府の対応に、何やってるんだ!と怒りを感じるけれど、それ以上に自分でどんなアクションを起こしたらいいのだろうか。3.11から2年と5ヶ月が過ぎて、フクシマのことがオオカミ少年の話のように、あっ、またかって、日々の自身の生活の中でつかみどころがなくなってきているというのも確かにあるみたい。

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 写真は先日のoff-Nibroll『いつもの時間』の公演で使った本。朗読劇だったので矢内原さんの戯曲「街にひそむ」のコピーを中古の文庫本のページに切り貼りしてたんです。この本は本番の2日前にもらった2冊目の本。わたしのは「ロミオとジュリエット」だったけれど、他の出演者は違うタイトルの本でした。それまでの稽古で使っていた本はページをびりびりやぶるシーンでだいぶ薄くなってしまっていて、なので本番用ということでもう1冊もらったんです。表紙が少しすり切れているのは、公演をやったギャラリーの床の素材が石だったので、本を床に何度か投げつけた(そいうシーンがあった)ことでできたもの。今回の矢内原さんの戯曲にも〈オオカミ少年の話〉が出てくるのだけれど、矢内原さんは3.11を想起させるものとして書き入れたらしい。 

 8月のこの時期、戦争をテーマにした多くのドラマや映画、アニメ、ドキュメンタリーなどがテレビや映画館で放映、上映される。子どもの頃は、日本兵の軍服が嫌いで(今でも嫌いだけれど)、こういう兵隊さんが出てくる番組を見るのが苦痛だったし、戦争の悲惨さとか頭では理解していても、遠い昔の出来事として遠ざけようとしていたように記憶している。

 昨年の今頃だったかNHKで戦争を体験した人々の証言が語られる番組がシリーズで放送されていた。ある人は兵士として赴いた戦地での悲惨な状況を、またある人は幼くして目の前で死んでいった兄弟のことを涙ながらに語っていた。何十年もの時間が経過していても、語り出すと当時の10代20代だったときのつらい記憶が一瞬にしてよみがえる。現在は80〜90才越の年配の方々の嗚咽が、こと〈戦争〉のすべてだったわけで。過去の番組等は、NHK「戦争証言アーカイブズ」としてこちらのホームページでみられます。http://www.nhk.or.jp/shogenarchives/

  戦争は二度と起きてはならない。20代30代の若い世代の人たちは憲法9条の改正に違和感のない人が中高年の世代に比べてずっと多いらしい。恋人同士にしろ家族にしろ、愛する者同士が戦争によって引き裂かれるなんていいわけないだろう。ロミオとジュリエットのお話は両家の対立による悲劇であったけれど、演劇として、観劇するだけならいっぱい泣けて気分がすっきりするだろうし、ロミオとジュリエットのバレエも美しいけれど、それがもし現実のこととして、愛する人との仲が戦争などの不可抗力によって引き裂かれるとしたら。そんなのいいわけないでしょう!! 誰もがロミオとジュリエットにならないために、今自分ができることを考える夏。明日もすごく暑いらしいけれど。